[昭和60年]究極の空気抵抗を目差して「スバル・アルシオーネ」

人には、保守的な考えと革新を目指す心が常に同居しています。
守りに入りすぎた自分の殻を破るために、
新しいことを始めようとするのもそのひとつですね。
しかし、同時に守りながら攻めると言うのは、実に難しい~(汗)
新しい技術や機能が成熟すると、企業・消費者も新たな何かを欲しがります。
この繰り返しを「時代のサイクル」と言うのでしょうか?
成熟しきったバブル経済が崩壊した後の日本は、新たな何か?を模索した時代でした。
90年代半ばから「アバンギャルド」と言う言葉を良く耳にしました。
20年前の言葉だと思うと、ちょっと古臭い死語の臭いがプンプンしませんか?
元々、アバンギャルドは、文化・芸術の世界で、最先端を意味する「前衛芸術」の事です。
時に前衛芸術=アバンギャルドを勘違いして、突拍子も無い事をする人がいますが、
そこに技術や思想の深みが無い場合は、すぐ飽きられてしまいますよね。
1985年6月。富士重工業から「スバル・アルシオーネ」発売。
キャッチコピーは「4WDアヴァンギャルド」
自動車業界は、それまで馬力や最高速度押しのカタログから一変します。
1980年代初頭より、ハイオーナーに人気のある車種販売に力を入れ、
1984年、白の三連星ならぬ、マークII・チェイサー・クレスタの三兄弟の登場で、
一気に「ハイソカー(ハイオーナーカー)ブーム、ここに極まれり!!」です。
豪華なモケット張りの内装とさりげないハイパワー…
4ドアハードトップで、パワステ・AT…もうもう、ラグジュアリーなんです(笑)
街中が白くなるくらい、走っていましたね(汗)
そんな、成熟したハイソカーに一石を投じたのが「スバル・アルシオーネ」です。
まさにアバンギャルドの塊。
居住性を犠牲にしたスタイリッシュなくさび形の2ドアクーペ。
スカイラインGT-R(R32)より先に採用された4WDシステム。
テレビゲームさながらの液晶式デジタル・メーター。
何よりも拘ったのは、空気抵抗値(CD値)です。
車は、馬力とトルクがあれば、速くなると信じていました。
高速で走れば走るほど、必要になるのが空気抵抗値だと
教えてくれたのは、アルシオーネでしたね。
日本車で初めてCD値0.30を突破し、0.29へ。
スーパーカーの代名詞ランボルギーニ・カウンタックが0.45ですから、
アルシオーネのアバンギャルドさが全開です(笑)
しかし、拘れば拘るほど、乗る人を選ぶのは世の常。
ハイソカーの波には勝てず、販売倍数も伸びなかったと言います。
あれから30年近く経った今…
前衛的だったアルシオーネの拘りは死んだのでしょうか?
いやいや、しっかり根付いて成熟の域に達しています。
空気抵抗値を下げることは、低燃費に繋がります。
高速に走るためのCD値から、低燃費で走るためのCD値へ。
ホンダ・インサイトやトヨタ・プリウスに代表するハイブリットカーは0.25の時代へ。
深みのある革新こそ、成熟への礎です。
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